イスラム国殺害警告、邦人2人は湯川さんと後藤さん=菅官房長官

[東京 21日 ロイター] - 菅義偉官房長官は21日午前の記者会見で、イスラム国とみられる過激派組織に拘束された日本人2人は、湯川遥菜さんと後藤健二さんとの見方を示した。犯行グループはイスラム国関係者の可能性が高いとし、引き続き2人の解放を求めていくと強調した。

問題の動画は20日にインターネット上に投稿された。イスラム国のメンバーとみられる男が、日本政府に対し身代金2億ドルを払わなければ2人を殺害すると警告。72時間の「期限」を設定した。政府が動画を確認したのは日本時間の20日午後2時50分ごろだったが、犯行グループが考えるタイムリミットがいつなのかははっきりしていない。

菅官房長官は、「2名の男性については家族による確認、諸情報を勘案すれば、湯川遥菜氏と後藤健二氏であると考えている」と説明。身代金の支払いについては明言を避け、「テロに屈することなく国際社会全体によるテロへの取り組みに貢献していく立場に変わりはない」とした。

中東訪問中の安倍晋三首相は20日、パレスチナ自治政府のアッバス議長やヨルダンのアブドラ国王らと会談し、各国への協力を呼びかけた。安倍首相は帰国を1時間ほど早め、21日午後4時半ごろに帰国する予定。

欧米のジャーナリストらを相次いで人質に取り、殺害してきたイスラム過激派の矛先が、ついに日本に向けられた。

 日本人とみられる男性2人が「イスラム国」とされる過激派に拘束され、日本政府に20日、身代金が要求された。日本側に通告された「猶予」は72時間。家族や関係者らは無事を祈りながら、情報収集に追われた。

 ナイフを手にした黒ずくめの男の両脇でひざまずく男性2人。「イスラム国」が公開したとみられるインターネット上の映像では、湯川遥菜(はるな)さん(42)とジャーナリストの後藤健二さん(47)とされる2人は、男が身代金を要求する間、終始無言だった。一人はしきりにまばたきを繰り返し、もう一人は不安そうな表情を浮かべていた。

 後藤さんが代表を務める映像通信会社「インデペンデント・プレス」(東京都港区)のホームページによると、後藤さんは仙台市出身。1996年に同社を設立し、テレビのニュース番組でシリア内戦やソマリアの海賊対策などをリポートしていた。アフリカ・シエラレオネの少年兵やルワンダの大虐殺を生き延びた家族に関する著書もある。

 日本政府関係者によると、後藤さんが、拘束されている知人の湯川さんを助けるため、中東に向かったのは昨年秋。自身のツイッターやネットに投稿された動画などから足取りをたどると、昨年10月2日にトルコからシリアに入り、翌3日、同国北部で市民の声などを動画で伝えていた。

最終更新:1月21日(水)9時47分

読売新聞

首相「許し難いテロ行為で強い憤り覚える」

日本テレビ系(NNN) 1月20日(火)19時51分配信

 安倍首相は日本時間20日午後、訪問先のイスラエルで記者会見を行い、イスラム過激派組織「イスラム国」が日本人とする2人を人質に取り、身代金を支払わなければ殺害すると警告するビデオメッセージを出したことについて、「人命を盾に脅迫する許し難いテロ行為で強い憤りを覚える。直ちに解放するよう強く要求する」と述べた。

 安倍首相「2人の日本人に危害を加えないよう、直ちに解放するよう強く要求する。人命尊重の観点から、対応に万全を期すよう指示した。地域の平和と安定のために、今後も国際社会と連携し、貢献していきます。この方針は揺るぎない方針で、この方針を変えることはない」

 安倍首相はまた、今回の中東訪問中に表明した2億ドルの支援について、「避難民支援であり、非軍事の分野の支援だ」と説明した。その上で、公開された動画の中で、この2億ドルの支援が殺害警告の理由になっていることに対し、「地域の避難民に必要な医療・食料などをしっかり提供していくのは日本の責任だと思っている。この支援を行っていく姿勢は変わっていない。非軍事分野において積極的な支援を行っていく」と支援は変わらずに行う方針を表明した。また、「国際社会は断固としてテロに屈せず対応していく必要がある」と強調した。

 また、政府は首相官邸で20日午後5時30分から関係閣僚会議を行った。首相の臨時代理である麻生副総理は「関係省庁が連携して対応にあたってもらいたい」と指示した。政府はまた、安倍首相の中東訪問に同行している中山外務副大臣をヨルダンのアンマンに派遣し、現地対策本部で対応にあたらせるという。 

「イスラム国」日本人人質事件 政府、湯川さんと後藤さんと判断

フジテレビ系(FNN) 1月21日(水)11時56分配信

過激派組織「イスラム国」とみられるグループが、日本人2人の殺害を示唆する映像を公開して身代金を要求している事件で、政府は、ビデオは湯川遥菜(はるな)さんと後藤健二さんであると判断した。
イスラム国側からの新たな要求などは明らかになっていないが、FNNは、後藤健二さんがシリア入りする直前に、「必ず生きて帰る」と話している映像を入手した。
映像で、後藤健二さんは「わたしの名前は後藤健二です。ジャーナリストです。これからラッカに向かいます。『イスラム国』、ISISの拠点といわれていますが、非常に危険なので、何か起こっても、わたしはシリアの人たちを恨みません。何か起こっても、責任は私自身にあります。どうか日本の皆さん、シリアの人たちに、何も責任を負わせないでください。よろしくお願いします。必ず生きて戻りますけどね」と話している。
後藤健二さんは、2014年10月下旬に、トルコ国境からシリアに入ったが、その際、すでに拘束されていた「湯川遥菜さんの行方について調べてくる」と話していた。
後藤さんのシリア行きの前に接触したシリア人ガイドの男性は、FNNの取材に対し、「シリア領内は危険だから行かない方がいい」と説得したものの、後藤さんは「自分の責任で行く」と話し、意志を変えなかったという。
シリア人ガイドは「わたしは、後藤さんに『死にに行くのか』と聞いたら、彼は『(危険は)わかっている』と答えた。後藤さんは『確かに『イスラム国』の取材に行くが、湯川さんについても、人に話を聞くつもりだ』と言った」と話した。
男性は同行を断ったが、後藤さんは結局、別の人物の助けで、シリアに入ることになった。
ガイドの男性は、「後藤さんは、シリア人のことを大切に思っていた」と話し、2人の殺害予告が出されたことについて、涙を流し、言葉を失っていた。

最終更新:1月21日(水)11時56分

Fuji News Network

イスラム国、邦人人質2人の殺害を脅迫 身代金2億ドル要求

【AFP=時事】(写真追加)イスラム教スンニ派(Sunni)の過激派組織「イスラム国(Islamic State、IS)」が、72時間以内に2億ドル(約236億円)の身代金を支払わなければ日本人の人質2人を殺害すると脅迫する動画が20日、イスラム過激派系のウェブサイトで公開された。

イスラム国、少年が「ロシアのスパイ」を銃殺する動画を公開

 動画では、黒づくめの服を着て刃物を持った戦闘員1人が、オレンジ色の服を着た人質2人の間に立ち、カメラに向かって「お前たちの市民の命を救うために2億ドルを支払うという賢い判断を下すよう、政府に圧力をかけるための72時間の猶予を与える」と英語で話しかけている。

 戦闘員はまた、身代金の要求は、安倍晋三(Shinzo Abe)首相が現在行っている中東歴訪で表明した対イスラム国作戦への非軍事支援に対する埋め合わせだと主張している。

 人質のうち1人は、昨年8月に公開された動画の中でユカワ・ハルナ(Haruna Yukawa)と名乗り、誘拐犯らによって荒っぽい尋問を受けていた人物だった。

 もう1人はフリージャーナリストの後藤健二(Kenji Goto)さん。1996年に東京で映像通信会社インデペンデント・プレス(Independent Press)を設立し、中東などの地域で撮影したドキュメンタリー映像を、NHKを含む日本のテレビ局に提供していた。

 外務省のテロ対策部門のある職員はAFPに対し、情報は承知しており対応策を話し合っているところだと述べた。動画は本物かとの質問に対しこの職員は、動画の信ぴょう性も確認中だ述べた。【翻訳編集】 AFPBB News

「イスラム国」資金難?油井空爆、原油安で打撃

【キリス(トルコ南部)=溝田拓士、カイロ=久保健一】イスラム過激派組織「イスラム国」とみられるグループがビデオ映像で日本人の殺害を予告し、巨額の身代金を要求したことについて、国際社会からは「日本が受け入れそうもない金額を要求することで、新たな政治宣伝を狙っている」(20日の英紙テレグラフ電子版)とする分析の一方、イスラム国が資金難に陥っているとの指摘も出ている。

 イスラム国はこれまでも人質を撮影した映像などで米国などを脅迫してきたが、今回は初めて、公然とビデオで巨額の身代金を要求した。イスラム国の資金難が指摘されるのは、同組織を支えてきた原油による収入が、大幅に細ったとみられるためだ。

 ドイツの情報機関「独連邦情報局」の報告書によると、イスラム国が掌握する油田の産油能力は推定で日量2万8000バレルとされ、米中央軍は、イスラム国の年間原油収入を10億ドル(約1200億円)と推計していた。

 だが、米軍が率いる有志連合は、昨年9月以降、イスラム国が掌握する石油施設を相次いで空爆、昨年末にはシリア北部ハサカで四つの油井を破壊した。

 昨年末以降、イスラム国支配地域からの石油輸送は、目に見えて減っている。イスラム国支配地から、トルコ南部レイハンル近郊のある村に転売されてくる石油は、多い時で1日10万リットルに上ったが、現在はほぼゼロという。密売に関わるシリア人、アブラシードさん(49)は、「去年の11月以降、石油を運ぶ仕事がほとんどなくなった」と語った。

 独連邦情報局は、イスラム国の原油収入について「現在では年間数億ドル程度ではないか」との見方を示している。

 国際原油価格の下落も、イスラム国の財政事情を悪化させているようだ。

 トルコでは、4か月前に1リットル5リラ(約260円)だったガソリンは現在4リラ(約205円)。これに伴い、イスラム国からの密売原油も、同2・5リラから1・5リラにまで下落した。石油密売は多くの中間業者が介在するため、売価が低下すれば、商売が成り立たなくなる。

 トルコ南部キリスの治安当局者は「イスラム国は収入減で戦闘員の給料支払いにも苦しんでいるようだ」と語った。

最終更新:1月22日(木)8時46分

読売新聞

ホテル自爆攻撃で50人以上殺す…サジダ死刑囚

【アンマン=上地洋実、カイロ=柳沢亨之】サジダ・リシャウィ死刑囚は推定44歳のイラク人の女で、ヨルダンの首都アンマンで2005年11月に起きた同時爆破テロ事件の実行犯グループの一人だ。

 イスラム国の前身「イラクのアル・カーイダ」を率いたアブムサブ・ザルカウィ容疑者(06年に米軍の空爆で死亡)に極めて近い人物。ザルカウィ容疑者は、03年のフセイン政権崩壊後のイラクで殺りくを重ねたテロリストとして知られる。イスラム国がリシャウィ死刑囚の釈放に成功すれば、「対米欧聖戦の勝利」の宣伝材料に利用できる切り札となる。

 アンマンの同時テロは、ヨルダンの親欧米路線の象徴と言える欧米系高級ホテルを標的とした自爆攻撃で、50人以上が死亡した。犠牲者の大半はヨルダン人で、隣国イラクからの「テロ輸出」を目の当たりにした政府と国民に衝撃を与えた。

最終更新:1月26日(月)7時19分

読売新聞

<イスラム国拘束>安倍首相「画像の信ぴょう性高い」

安倍晋三首相は25日、NHKの討論番組で、イスラム過激派組織「イスラム国」とみられるグループに拘束された後藤健二さん(47)が、湯川遥菜さん(42)の遺体とみられる写真を持たされた新たな映像が、インターネット上の動画投稿サイトに公開されたことについて「湯川さんを殺害したとみられる写真が配信された。残念ながら今の時点で信ぴょう性は高いと言わざるを得ない」と述べ、政府として湯川さんが殺害された可能性が高いと判断していることを明らかにし、後藤さんの早期解放を訴えた。

【湯川さんの父】報道各社の取材に応じて語ったこと

 首相はまた、犯行グループがヨルダン当局に拘束されている死刑囚とみられる女性の釈放を要求したことについて「人命第一の観点から、ヨルダンとも緊密に連携しながら対応に当たっていく」と語った。【松本晃】

イスラム国殺害脅迫 湯川さん殺害か? ネット上に後藤さんとみられる画像

 イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」に拘束された後藤健二さん(47)とみられる男性が、湯川遥菜(はるな)さん(42)は既に殺害されたとの声明を読み上げる画像がインターネット上に掲載された。安倍晋三首相は25日未明、関係閣僚会議の冒頭で「このようなテロ行為は言語道断の許し難い暴挙で、強い憤りを覚える。断固非難する」と述べた。これに先立ち、菅義偉官房長官は官邸で緊急の記者会見を行い、配信を確認するとともに「残る後藤氏に危害を加えないよう、直ちに解放するよう強く要求する」と強調した。

 画像は日本時間の24日午後11時すぎに投稿。後藤さんとみられる男性は、首を切断されたように見える別の男性の写真を掲げ、英語で「仲間のハルナ・ユカワがイスラム国の土地で殺された写真」と説明。

 声明で犯人グループは、後藤さんを解放する条件として従来の身代金要求を取り下げ、代わりに自爆テロの共謀罪で、ヨルダンで死刑判決を受け収監中のイラク人、サジダ・アルリシャウィ死刑囚をヨルダン政府に釈放させるよう要求した。

 これを受け、政府は25日午前1時すぎから関係閣僚会議を開催し、情報の収集、分析を進めるとともに、今後の対処方針について協議した。

 菅氏は会見で西村泰彦内閣危機管理監と谷内正太郎国家安全保障局長に対し「関係省庁と連携して情報収集などしっかり対応するように」と指示したことを明らかにした。

 イスラム国側は今月20日、身代金2億ドルを72時間以内に支払わなければ、湯川さんと後藤さんの2人を殺害すると警告するビデオ声明をネット上に公表。中東を歴訪していた安倍首相がイスラム国対策として表明した2億ドルの支援を殺害警告の理由にしていた。

 これに日本政府は再三、資金拠出が非軍事の人道支援であることを強調し、人質の早期解放に向け、イスラム国側の態度の軟化を促してきた。同時に、首相は「わが国は決してテロに屈することはない。国際社会と手を携え、卑劣なテロとの戦いに万全を期す」との姿勢を強調していた。

「イスラム国」が期限とする「72時間」が23日に迫る中、拘束されているジャーナリスト・後藤健二さんの実母、石堂順子さんが東京の外国特派員協会で会見を行った。

「日本国民・日本政府の皆さん、諸外国の皆さんに健二が大変ご迷惑をおかけしていることに心よりお詫びします。私はこの3日間、ただただ悲しくて、泣いていました。表現できません。健二は幼い頃から心のやさしい子でした。健二はいつも『戦地の子どもたちの命を救いたい』と言っていました。中立な立場で戦争報道をしてきました」

そして、「イスラム国」、日本政府に呼びかけている。

「イスラム国の皆さん、健二はイスラム国の敵ではありません。解放してください」
「あと残された時間はわずかです。日本政府の皆さん、健二の命を救ってください」

中東の過激派組織「イスラム国」による日本人人質事件に関して、イスラム国の司令官とされる人物と古くから交流があるというイスラム学者・中田考氏(同志社大客員教授)が1月22日、東京・有楽町の外国特派員協会で記者会見を開いた。

中田氏はイスラム法学・神学の研究者で、イスラム教徒。外務省の専門調査員としてサウジアラビアで働いた経験があり、シリアには10数回、渡航したことがあるという。ただ、現在は、イスラム国に渡航しようとした北大生を手助けしたとして、警察の捜査対象となっている。

中田氏は、イスラム国が日本人2人の命と引きかえに、身代金2億ドルを要求している背景について説明。「人道支援という条件を課したうえで、イスラム国周辺国と同じ支援をおこなうべきだ」と提言した。さらに、中田氏は、イスラム国に向けて、日本人人質の解放するよう求めるメッセージを述べた。

【動画】イスラム学者・中田考氏 記者会見

https://www.youtube.com/watch?v=fGywEzct6pA

以下、中田氏が会見冒頭におこなったスピーチの全文を掲載する。

●「イスラム国と戦う」という発言は不用意だ

私は被疑者の立場にいますので、マスコミの質問も避けていましたし、イスラム国とのコンタクトも避けていました。それは私にとっても問題ですし、先方にとっても迷惑がかかるというのがありました。今回こういうことで、人命がかかっていますので、みなさんの前でお話することにしました。

今回はタイミングとして、安倍総理の中東歴訪にあわせて発表がありました。安倍総理は、中東に行ったことが地域の安定につながる、和平につながると信じていたのだと思いますが、残念ながら、非常にバランスが悪いと思っています。

イスラエルの入植地について反対を直言することで、バランスのとれた外交をおこなっていると信じているのだと思いますが、中東において、そもそもイスラエルと国交を持っている国がほとんどないという事態を正確に実感していないのだと思います。これは中東、アラブ、イスラム世界では非常に偏った外交だと見られます。

(安倍総理は)記者会見の中で「難民支援、人道支援をおこなっている」と強調していましたが、もし難民支援、人道支援ということで今回の中東歴訪があったのだとすれば、300万人といわれている「シリアからの難民」の半数以上がいるトルコを最優先にすべきです。トルコが外れているところで、「難民支援、人道支援をする」と言っても通用しないと思います。

訪問国として、エジプト、パレスチナ、ヨルダンと、すべてイスラエルに関係している国を選択している時点で、アメリカとイスラエルの手先と認識されます。人道支援、難民支援のためと理解されないことは、中東を知る者としては常識です。

「中東の安定に寄与する」というのは理解できる発言ですが、中東の安定が失われているのは、イスラム国が出現する前のことです。その中で、わざわざイスラム国だけを名指しで取り上げて「イスラム国と戦うため」と言いながら、「人道支援だけやっている」と言っても、通用しない論理だと思います。

日本人の人質2人がいることは、外務省も把握していたことです。その中で、わざわざ「イスラム国と戦う」と発言するのは、非常に不用意だと言わざるをえないと思います。

●「交渉パイプ」がないと話にならない

テロリストの要求をのむ必要はもちろんないわけですが、しかし、そのことと「交渉するパイプを持たないこと」とは、まったく別のことだと思います。たとえ無条件の解放を要求するとしても、実際に人質2人を解放するために安全が確保されるのか、その間の空爆を止めることができるのか、誰が受け取りにいくのか、どこで受け取りにいくのか。そういったことを正しい相手と正しく話すパイプがないと、そもそも話になりません。

これまで、今回と似たようなケースで「仲介者になる」という偽者が多くあらわれて、それにアメリカがだまされるというケースがたくさん起きています。今回も、そういうおそれがあるわけです。

イスラム国の呼びかけは、安倍政権だけではなく、日本国民に対する呼びかけという形をとっていました。それに対して、われわれは応えるべきだと思っています。もちろん、われわれは民主主義をとっている国ですので、安倍政権に賛成する人間がいれば、反対する人間もいる。その中で、われわれにどういう対応ができるのかが、問われているのだと思います。

●援助が適切な人に届いていない

ここからは、私個人の提言になります。これはもちろん、イスラム教徒、イスラム学者としての立場でもありますし、同時に日本国民として、アメリカ、日本に受け入れられるギリギリの線だということで提言させていただきます。

安倍総理が言ったとおり、日本は、イスラム国と戦う同盟国側に援助するわけですけども、あくまで人道支援に限られるという論理は、イスラム国に対しても同じように適用されるべきだと思っています。

これまでも、人道援助、経済援助の名のもとに、アフガニスタンやイラクに関して、日本や国際社会は多くの援助をおこなってきましたが、それが適切な人のもとに届いていなかった。特に、スンナ派の人々の扱いが非常に悪かった。それが、今回の事件の根源にあります。

現在のイスラム国の前身は、イラクのスンナ派イスラム運動です。彼ら自身は、アメリカによってイラクが攻撃されたことを、彼らの体験として覚えています。サダム・フセイン政権が倒れたときは、彼らも含めてほとんどのイラク人は、アメリカを歓迎していました。それが数カ月で「反アメリカ」に変わった。空爆その他で、たくさんの人が、特に女性や子どもが殺されたが、それに対して、まったく補償がされていない。現在、それが繰り返されており、イスラム国の支配地域で、多くの人びとが殺されています。

国際赤十字、中東地域では「赤新月社」と呼ばれている団体は、イスラム国の支配下にあるところでも、人道活動を続けていると聞いています。私の提言としては、イスラム国が要求している金額が日本政府の難民支援と同額ということですので、難民支援・人道支援をおこなうという条件を課したうえで、赤新月社を通じて、またトルコに仲介役になってもらって、難民支援や犠牲になっている人の支援をおこなうことが合理的であって、どちらにも受け入れられるギリギリの選択ではないかと思っています。

日本ではあまり大きく報道されていませんでしたが、イスラム国は1月17日に、ヤジーディ教徒350人を無償で、人道目的で解放しています。一つのメッセージだと考えるべきだと思います。

●72時間はあまりにも短すぎる

これから、イスラム国にいる私の友人たち、古い友人たちに私のメッセージを伝えたいと思います。

「日本政府に対して、イスラム国が考えていることを説明し、こちらから新たな提案をしたいと思います。しかし、72時間はそれをするには時間が短すぎます。もう少し待っていただきたい。

もし交渉ができるようであれば、私自身、イスラム国に行く用意があります。1月17日にヤジーディの350人の人質が人道目的で解放されたことは存じています。そのことは高く評価すべきだと思っていますし、印象も良くなっていると思います。

日本人を解放することが、イスラームおよびイスラム国のイメージを良くしますし、私もそれを望んでいます。また日本にいるすべてのムスリムも、そのことを望んでいます。72時間はわれわれにとって、あまりにも短すぎます。もう少し待っていただきたいと思います。

これを聞いていただければ幸いです。ありがとうございます」

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コメント: 6
  • #1

    讃岐うどん娘 (木曜日, 22 1月 2015 19:19)

    なにより命は、尊いと思いますので色々ご意見ありますが、救ってあげたいです。

  • #2

    ブラックレイン (木曜日, 22 1月 2015 22:22)

    資金難だからなんなんだ。自爆テロが日本で発生したらたまらん。理解できへん。

  • #3

    大阪のあきんど (土曜日, 24 1月 2015 21:01)

    自己責任だけでは済まされない。拉致られたご家族にはかわいそうだが、テロに屈しない強い日本人の対処を示してほしいものだ。

  • #4

    誘拐ビジネス (日曜日, 25 1月 2015 12:38)

    軍事ジャーナリストって、危険すぎる。

  • #5

    安部首相お願い致します。命をかけて回答して下さい。 (日曜日, 25 1月 2015 12:42)

    とうとう殺害された❓真実なのか?拷問部屋での軟禁生活は辛いでしょう。1秒でも早く助けてあげてください。

  • #6

    安部さん。助けて‼︎ (日曜日, 25 1月 2015 12:45)

    トルコの外交官と交渉して早く解放してあげてください。人質交換条件のんでください。命が一番 優先順位ですよ。