「戦争はかっこいい」と誤解招いたガンダム 安彦良和氏

「機動戦士ガンダム」は1979~80年に放送されたテレビアニメだ。地球連邦政府に対し、ジオン公国が独立戦争を挑む筋書きの中で、主人公の少年アムロ・レイの成長など人間ドラマが描かれている。弘前大中退で、アニメーションディレクターを務めた安彦良和さん(67)に作品に込めた戦争への思いを聞いた。8日は太平洋戦争開戦の日。


 ――70年代、戦争をテーマにしたアニメは少なかったのでしょうか。

 「当時、戦争を題材にしたアニメは『宇宙戦艦ヤマト』とガンダムしかなかった。その両方にメインスタッフとして関わっているのは僕だけだと思う」

 「戦争が題材ということで話題になった。ヤマトでは『右翼的なテーマはいかがなものか』という評論もあったし、ガンダムでは『非常に好戦的だ』と言われたり『反戦的な要素もあるぞ』と指摘されたりした」

 ――漫画家として2001年から『ガンダム THE(ジ) ORIGIN(オリジン)』を連載し、ガンダムにはなかった戦争前の物語を描いています。

 「戦争には必ず前段がある。ガンダムは舞台がいきなり戦争なので、『戦争はかっこいい』とか『弱者の抵抗として戦争は正しいんじゃないか』とかいう誤解を招いてしまった。だから、原作にない物語の過去を漫画で描いた。今はそれをアニメにしている」

 ――ガンダムには、友達が少なく内向的な主人公アムロ・レイや、ジオン軍を支配するザビ家への復讐(ふくしゅう)に燃えるシャア・アズナブルなど様々な人物が登場します。

 「人間は非常に欠陥の多い生き物で間違いを犯してしまうし、コミュニケーションは苦手だし、あるいは不可能かもしれないし、困ったものだというのはガンダムの中でも大事な要素だ」

 「それなのに、(ずば抜けた戦闘能力を発揮し、言葉を超えた意思疎通の能力を持つ)アムロら『ニュータイプ』同士ならわかり合えるので、未来はニュータイプのものだということこそがガンダムのテーマだとの誤解が広がってしまった」

朝日新聞社

最終更新:12月8日(火)17時13分

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