「娘に歌の才能があるとみんなが言ってくれるから、 音楽学校に行かせようと思うんだ。でも金がなくてね。 それで学費の足しにと空き缶を集めているんだよ」
この話を聞いたチームメイトは、 彼の手伝いをすることにしました。
チームメイトは、娘思いの彼の姿を、 見てみぬふりなど出来なかったのです。
彼女の歌の魅力に気づいていたのはもちろん、 「子ども思いの彼のために何かしてあげよう」という気持もあったのでしょう。
そして、空き缶集めはチームの日課となり、 その結果、シドの娘は無事に音楽学校に入学することができます。
その子の名はジェラルディンといいました。
その後、ジェラルディンは、才能を認められ、 ベルリンでオペラ歌手としてデビューします。
そしてアメリカに凱旋すると、 ニューヨークのメトロポリタン歌劇場でプリマドンナとして活躍。
圧倒的な美声と美貌を武器に、歌手として、 そして14本の映画に出演する女優として、名声を得ることになったのです。
それにしても大リーガーが空き缶拾いをしていた時代。
そしてチームメイトまでがそれを手伝う時代。
今や隔世の感があります。
今、大リーガーは破格のサラリーで、 空き缶拾いをする必要などありません。
だけど、どちらが豊かな時代なのか、 ちょっと答えが出し難い気がするのは、変でしょうか。
参考本:ちょっといい話 発行:アルファポリス文庫 著者:佐藤光浩
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