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職業に貴賤はない。それは事実だが・・・【青空と向日葵の会】

【職業に貴賤はない。それは事実だが・・・】
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ある会社で、電気工事士に従事していました。
しかし、その会社が業績不振になり、
リストラを実施せねばならぬ状態になりました。
こんな時の会社の環境は、疑心暗鬼になり、
雰囲気はますます暗くなってきます。
私は誰かが辞めさせられるなら、
自分が辞めれば一人は救われると思い、
自分から申し出て退社しました。
その後、し尿汲み取り(役場の現業職)
に従事することになったのです。
妻と長女は事情を理解し、早くに納得したのですが、
長男が反発して一週間も飯を食わないような状態でした。
長女は高校生で、長男は中学生でした。
反抗期の長男には無理もないことです。
でも、長男には時間をかけて言い聞かせました。
『職業に貴賎はない。
 誰かがやらねばならない仕事が世の中にはあるんだ。
 お前は、もし、友達の父親が汲み取りをしていたら、
 そいつと付き合わなくなったり、
 その父を軽蔑したりするのか』
諄々と言い聞かせ、ようやく長男も納得したようです。
ある日のことでした。
地元の本屋さんで汲み取り作業をしていたら、
女子高生数人が遠くから来るのが見え、
その中に長女がいるではありませんか。

の背中に冷や汗が流れました。

作業による汗ではなく、 脇の下からも悪い汗が出てきました。

友達の手前、こんな父親の姿を見られる娘の心境はどうだろう。

年頃の女の子です。

友達の見る目は、 彼女らにとって大きい意味を持つ年代でもあります。

娘が恥ずかしく思いやしないかと、 私は、とっさに物陰に隠れようとしたのです。

その時でした。

『お父さん、頑張って~』 少し離れた所から、この私に向けて、 娘が声をかけてきたのです。

この時の私は、驚きのあまり 複雑な笑いを返していたかと思います。

その後、深い自省の念がこみあげてきました。

私は、日頃言ってきたことと、 自分のとった行動の違いに情けなさを感じたのです。

職業に貴賤は無いという長男への説得は、 表面上だけの薄い言葉だったのか。

娘の方が人間としてどれほど立派か、 それを思い知らされた場面でした。

今でもこの時のことを思うと、 娘への感謝とともに、自責の涙がこぼれ落ちます。