· 

小泉信三先生が出征する息子に送った手紙。青空と向日葵の会

【小泉信三先生が出征する息子に送った手紙】
https://yuru2club.com/wp/?p=4262
小泉信三という経済学者の先生がいました。
この方は、50年も前に亡くなった方ですが、
慶應大学の塾長や今上天皇の指導役も務めた先生です。
この方は、戦時中、前途ある学生が戦場に駆り立てられていく現状に、
深く心を痛めていました。
スポーツ大好きの先生は、学徒出陣に赴く生徒に
せめて最後の餞(はなむけ)を残したい。
そうだ、戦争で弾圧されている「早慶戦」を復活し、
生徒たちを喜ばせ、慰めてあげたい。
いろんな逆風に晒されましたが、
小泉先生は、最後の早慶戦の実行に成功することができました。
その時の出来事は「ラストゲーム、最後の早慶戦」という映画にもなっています。
その小泉先生、ご自身の一人息子も戦場にとられ、
そして出征後、まもなく彼の戦死の知らせを受けることになります。
小泉先生は、息子を戦場に送り出す時に、一通の手紙をしたためています。
24歳の息子に宛てた深い愛情が紙背から伝わってきます。

泉信三先生の、出征する一人息子へ宛てた手紙です。

君の出征に臨んで言っておく。

われわれ両親は、完全に君に満足し、 君をわが子とすることを何よりの誇りとしている。

僕はもし生まれかわって妻を選べといわれたら、 幾度でも君のお母様を選ぶ。

同様に、もしわが子を選ぶということができるものなら、 われわれ二人は必ず君を選ぶ。

人の子として両親にこう言わせるより以上の孝行はない。

君はなお父母に孝養を尽くしたいと思っているかもしれないが、 われわれ夫婦は、今日までの24年間の間に、 およそ人の親として享(う)け得るかぎりの幸福を既に享けた。

親に対し、妹に対し、なお仕残したことがあると思ってはならぬ。

今日とくにこのことを君に言っておく ――

小泉先生のご子息が、手紙を手に胸震わせている様子までが、 この文面の向こう側から伝わってきます。