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【行方不明騒動の全真相】ピーコが万引きで逮捕されていた 店は“常習性”から通報、現在は身寄りもなく施設に

 逮捕後、ピーコは釈放され、自宅には戻らず施設に入所した。 「行政の担当者が、代理人弁護士と話し合って処遇を決めたようです。ひとり暮らしはもう難しい状態で、身寄りもなく頼れる人もいない。そこで施設に入所したようですが、おすぎさんとは違うところにしたそうです。  ピーコさんの逮捕はごく親しい人にしか伝えられず、携帯電話も解約してしまったので、知人や友人らも連絡が取れない状態が続いています」(前出・ピーコの知人)     これがピーコ失踪のてん末のすべてだった。  20日発売の『女性セブン』は、おすぎとピーコによる「老老介護」の過酷な運命、ピーコが1か月前に同誌に言い残していたこと、そして決して他人事ではない超高齢化社会における「認知症患者による万引き」の問題などについて詳しく報じている。

《行方不明》ピーコ(78)一人暮らしの部屋にはゴミがたまり…おすぎと別れ募らせていった孤独感

 一体どこへ──。双子タレント「おすぎとピーコ」の兄・ピーコ(78)の行方がわからなくなったと『週刊女性』が報じた。「3月下旬、警察が“ピーコさんはここに住んでいますか?”と訪ねてきた」といった近隣住民の発言を伝えている。ピーコの姿が見えないため、自宅マンションの管理人が代理人弁護士の許可を取った上で部屋に入ったところ、テレビもエアコンもつけっぱなしだったという。

 おすぎとピーコの晩年については、2022年5月に『女性セブン』が「『50年ぶり同居で老々介護』の顛末」として報じている。

 ピーコは、神奈川県横浜市内のマンションで一人暮らしをしていたが、この家は弟のおすぎ(78)が、姉から相続したものだった。福岡を拠点にしていたおすぎが体調不良のため引っ越してきて、兄弟一緒に暮らし始めたのが2021年の秋頃。しかし「老老介護」生活は長くは続かなかった。もともとおすぎに認知症の初期段階のような兆候が見られたことで始まった同居だったが、ピーコにも同じような症状が出てきたのだ。

 当時、『女性セブン』の取材に対して、2人の共通の知人がこのように答えていた。

「記憶力が落ちていき、お互いに感情の起伏が激しくなって、毎日のようにけんかをしていました。時にピーコさんが、おすぎさんを“いますぐ出て行け!”と自宅から追い出すこともありました。行くあてもなく街を徘徊するおすぎさんを警察が保護することが続き、“これ以上は一緒に住めない”という状況になったのが、2022年2月ぐらいです」(2人の共通の知人)

 おすぎは近隣の高齢者施設に入居し、ピーコは横浜の自宅に残った。とはいえピーコも決して万全の体調ではない。

「おすぎさんは介護認定も受けており、成年後見人が決まりそうですが、自宅で一人暮らしを続けるピーコさんも心配です。いまは、行政の方が週に何度かピーコさんの自宅に様子を見に行っている状況。ただ、部屋にはゴミがたまっていて、身の回りのことは何もできていないように見えます。

 最近、かつての友人らに“おすぎが死んだ”“お骨になって帰ってきた”“葬式も済んだ”などという妄言を言いふらしていて、関係者を困惑させています。しかも、それは冗談という様子ではなく、幻を信じ込んでしまっているようなんです」(前出・2人の共通の知人)

 2022年4月、ピーコは『女性セブン』の取材に「おすぎ? おすぎはもう死にました」と答えていた。実は記者が今年3月下旬にも再びピーコを訪ねたところ、やはり「おすぎはもう死んだのよ」と繰り返していた。ピーコもおすぎも、お互いの消息を知らぬまま過ごしているという現状があるのだ。

 2021年夏、ひっそりと閉鎖していた個人事務所「オフィスおすぎとピーコ」。同年12月にバラエティ番組『5時に夢中!』(TOKYO MX)に出演したのを最後に、ピーコはメディアから離れている。そして、今回の『週刊女性』の“行方不明”報道だ。近隣住民が語る。

「ピーコさんは、ファミリー向けの広い部屋で一人暮らしをしていたみたいです。このあたりは落ち着いた住宅街ですが、お年寄りが気軽に行けるようなお店や施設はあまりない。目の前には線路があるので、あのマンションは朝から晩まで音がうるさいんじゃないでしょうかね。ピーコさんはマンションの上の方の階に住んでいたと聞きますし、自然と家に閉じこもりがちになり、孤独感を募らせていったのかもしれません」

 安否が気遣われる。

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おすぎとピーコ「50年ぶり同居で老老介護」の顛末 互いの消息を知らぬ

 軽妙な掛け合いで、一躍人気者となったおすぎとピーコ。だが、最近2人のトークを耳にする機会がなくなった。突然テレビから消えた双子のいまを追うと、想像を絶する近況が明らかになった──。

「おすぎが帰ってくるのよ。具合が悪くなっちゃって、面倒みてやらないとダメなの」

 昨年12月、バラエティー番組『5時に夢中!』(TOKYO MX)に出演したピーコ(77才)はそう話し始めた。この日のトークテーマは「あなたの周りのやっかいな高齢者」。共演者がピーコの双子の弟・おすぎ(77才)の近況について尋ねると、福岡を拠点にする弟の体調が芳しくなく、近いうちに同居を始めることを唐突に明かしたのだ。

 不機嫌そうな顔で「ちょっと嫌なの」とつぶやきスタジオを笑わせたが、ピーコは昨年から自身の環境を変えていた。昨夏、個人事務所「オフィスおすぎとピーコ」をひっそりと閉鎖。おすぎが姉から相続した神奈川県横浜市内のマンションに引っ越しを済ませていたという。

 約50年ぶりとなる兄弟の同居生活。衝突と雪解けを繰り返した名コンビは、人生の最晩年を並走しようとしていた。だが──。4月下旬、横浜の自宅から出てきたピーコに、おすぎとの同居生活について聞くと衝撃の言葉が飛び出した。

「おすぎ? おすぎはもう死にました」

 絶句する記者にピーコはこう続けた。

「ずっと認知症で入院していたのですが、2月に亡くなりました」

──存じ上げておらず申しわけございません……。

「亡くなって、お骨になって帰ってきたの。もうこれで……すみません」

 そう言うとピーコは涙ぐみながら自宅へと戻っていった。老老介護を始めたばかりだった兄弟に何が起こったのか。

ブレイク、亀裂、和解…波乱万丈の2人の仲

 2人の近況を語る前に、まずは激動の半生を振り返る。おすぎ(本名・杉浦孝昭)とピーコ(本名・杉浦克昭)は、1945年1月18日、横浜市に生まれた。両親と13才年上の長姉、9才上の次姉がおり、5分早く生まれたピーコは兄としてしつけられ、常におすぎを気にかける弟思いの兄だった。

 高校卒業後、紆余曲折を経て兄はファッション、弟は映画評論の道へ進むと、1975年に転機が訪れる。ラジオ番組『一慶・美雄の夜はともだち』(TBSラジオ)に一緒に出演し、マシンガントークが大ウケ。その後、「おすぎとピーコ」として本格的に活動を始め、テレビやラジオで“コンビ”として引っ張りだこに。だが兄弟の関係には深刻な亀裂が生じていた。

「当時、イケイケな話術で視聴者を虜にしていたのは、主におすぎさんで、ピーコさんに“才能のないアナタがおすぎの足を引っ張っている”と面と向かって批判する業界関係者もいたそうです。おすぎさんからも“アタシはピーコより才能がある”という態度が透けて見えることがありました。人気絶頂の裏で2人はけんかが絶えなかった。当時のピーコさんは“おすぎとは3日以上仲がよかったことがない”とも話していました」(芸能関係者)

 1982年、積もりに積もった鬱憤がついに爆発した。出張先のホテルで、ふとしたきっかけから兄弟は取っ組み合いの大げんかを始めた。近くにいた友人が止めなかったら、どちらかが死んでいたかもしれないほどの衝突だったという。

「彼らはこれを機に“別々の道を行こう”と決めて、コンビの仕事を断るようになったのです」(前出・芸能関係者)

 兄弟に再び転機が訪れたのは1989年。ピーコの左目に悪性腫瘍が見つかり、左眼球摘出の手術を受けることになったのだ。兄の窮地にもかかわらず、おすぎは一向に見舞いに来なかった。

「実はこのとき、おすぎさんはピーコさんが予定していた仕事をすべて肩代わりし、全国を飛び回っていました。おかげでピーコさんは仕事を減らさずにすみました。さらにおすぎさんは、ピーコさんのために義眼を選び、友達とお金を出し合ってプレゼントしたんです。犬猿の仲といわれた兄弟ですが、おすぎさんは誰よりもピーコさんを心配していた。

 手術後、満を持しておすぎさんがお見舞いに訪れたとき、医師からがんの転移がないと告げられました。2人は抱き合ってわんわん泣いて喜んだそうです」(前出・芸能関係者)

 雪解けとともに、運気も好転した。当時高視聴率を誇った『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)で中居正広がピーコのものまね「ヒーコ」を披露するとコンビの人気にまたもや火がつき、2人はその後『笑っていいとも!』(フジテレビ系)など人気番組のレギュラーを務めた。50代での再ブレークだった。

「もう一緒に住めない」

 年を重ねるにつれて、おすぎは活動の拠点を地方に移すようになった。福岡県を中心に九州地方でラジオやテレビ番組に出演。九州での仕事量が東京での仕事量を大きく超え始めていた2010年、おすぎは福岡にマンションを借り、東京には週に一度のペースで通う生活を送るようになる。65才での“地方移住”だった。そのおすぎに異変が訪れたのは昨年の夏頃だったという。

「収録中、集中力が散漫になることが増えたんです。物覚えも悪くなっていたようで、“番組に迷惑をかけるかもしれない”と本人も不安を抱えていました。どうも認知症の初期段階のような兆候があったそうです。そこでピーコさんと話し合い、横浜の自宅で同居することになったんです。昨年の秋頃から同居となりました」(福岡の番組関係者)

 おすぎは元気な頃から、「ピーコがいてくれてよかった。老後は2人で暮らしたい」「老後のお金はもう貯金してある。ピーコはお金がないから、アタシが面倒をみないと」とよく話していたという。予期していた通り兄弟での「老老介護」生活が始まったわけだが、2人を知る共通の知人は、「結果的にこの同居がよくなかったのかもしれない」と嘆く。

「介護生活のなか、これまでとは違うおすぎさんの様子にピーコさんはショックを受けると同時に、彼自身にも同じような症状が出始めたんです。

 記憶力が落ちていき、お互いに感情の起伏が激しくなって、毎日のようにけんかをしていました。時にピーコさんが、おすぎさんを“いますぐ出て行け!”と自宅から追い出すこともありました。行くあてもなく街を徘徊するおすぎさんを警察が保護することが続き、“これ以上は一緒に住めない”という状況になったのが、今年の2月ぐらいです」(前出・2人の共通の知人)

 現在、ピーコは横浜の自宅に、おすぎは近隣の高齢者施設に入居している。つまり、おすぎは亡くなっていなかった。

「おすぎさんは介護認定も受けており、成年後見人が決まりそうですが、自宅でひとり暮らしを続けるピーコさんも心配です。いまは、行政のかたが週に何度かピーコさんの自宅に様子を見に行っている状況。ただ、部屋にはゴミがたまっていて、身の回りのことは何もできていないように見えます。

 最近、かつての友人らに“おすぎが死んだ”“お骨になって帰ってきた”“葬式も済んだ”などという妄言を言いふらしていて、関係者を困惑させています。しかも、それは冗談という様子ではなく、幻を信じ込んでしまっているようなんです」(前出・2人の共通の知人)

 ピーコはおすぎが施設に入ったことを知らないという。

 冒頭のように、ピーコは昨年末、テレビ番組で「おすぎが帰ってくる」と語ったが、すでにその頃には同居生活は始まっていた。

「おすぎさんはレギュラー番組を昨年秋に降板し、年末以降は“休業状態”にあります。ピーコさんも同じような状況で、お仕事ができる状態にはなかったのですが、どういうわけか、本番になるとシャキッとする。年末の『5時に夢中!』に出演したときも、ギリギリまで出るか出ないかを悩んでいた。多少の記憶違いはありましたが、無難にこなせたと思っています。でも、今年に入って以降は仕事を断っています」(前出・2人の共通の知人)

 性を超越し、昭和、平成、令和と駆け抜けたおすぎとピーコ。息の合ったあの掛け合いは、もう見ることはできないのだろうか──。

※女性セブン2022年5月26日号

【全文公開】ピーコ、万引きで逮捕され施設へ入所 失踪報道直前には「元気っていうか生きているわよ」

 艶やかな紅色の裏地が目を引く黒のロングコートに、トレードマークの黄色みがかったレンズのメガネ。買い物かごをさげたピーコ(78才)は、あてどもなくゆっくりと店内の商品を見て回る。ただし手に取るのはいつも決まっていて、瓶のウイスキーと、つまみにするでき合いの総菜だ。セルフレジの前で立ち止まると、慣れた手つきで袋詰めを済ませ悠然と店を後にした。何の変哲もない日常風景のように見えるが、その背景には現在の日本が抱える社会問題が隠れていた──。

 冒頭は3月上旬、都内の自宅近くの店で買い物をしていたピーコの様子だ。かつて「おすぎとピーコ」としてテレビに引っぱりだこだったピーコに関する報道が、この4月に相次いだ。4月10日、『週刊女性プライム』が自宅マンションからピーコが姿を消し、行方不明になっていると報じた。それから5日後の4月15日には『サンデージャポン』(TBS系)がピーコが高齢者施設にいると「無事」を伝えた。

 失踪報道直前、本誌『女性セブン』は現在の暮らしについてピーコに話を聞いていた。小さな買い物袋を手に自宅マンションに帰宅したところに声をかけた。

──ピーコさん、お元気そうでよかったです。
「元気っていうか生きているわよ。ひとりで暮らしてるから、お総菜とか好きなものを買ってくるの。酒ばっかり飲んでるのよ。酒浸りの生活とでも書いておいて(笑い)」

──おひとりだと寂しくないですか?
「う~ん、気楽よ。もうね、好きなようにやっているから。死ぬときはあなたに電話するわね(笑い)。じゃあね」

 少しやせてはいたものの、相変わらずのピーコ節を発揮していた。それからわずかな時間を置いて、ピーコは自宅から姿を消した。

 昨年5月、本誌・女性セブンは「ピーコの幻迷『老老介護の果てに』」という記事で、喜寿を迎えたピーコと双子の弟・おすぎ(78才)の老後に待っていた過酷な運命を報じた。

「おすぎさんは2010年から福岡を拠点に活動していたのですが、2021年の夏頃から体調に変化が生じ始めました。集中力が散漫になって、物覚えが悪くなるなど、認知症の初期症状が見られた。同年秋から、おすぎさんが姉から相続した横浜のマンションでピーコさんと一緒に暮らすことになったんです。両親と姉2人をすでに亡くした兄弟の、50年ぶりの同居でした」(ピーコの知人)

 おすぎは以前から「ピーコがいてくれてよかった。老後は2人で暮らしたい」と語っていた。兄弟は一緒に穏やかな余生を過ごすはずだったが、老老介護の現実は厳しかった。

「同居生活を始めてすぐ、これまでと違うおすぎさんの様子にピーコさんはショックを受けました。同時に、彼自身の記憶力も低下し、感情の起伏が激しくなった。認知症と言えるものでした。介護生活がストレスになり、おすぎさんに“いますぐ出ていけ”と声を荒らげることも増えて、とうとう“これ以上は一緒に住めない”という状況になってしまった。昨年2月頃におすぎさんは家を出て、近所の高齢者施設に入所しました」(前出・ピーコの知人)

 だが、同居を解消してもピーコの症状は回復するどころか、ますます悪化していった。

「怒る相手がいなくなったからか、おすぎさんが去った後のピーコさんはどことなくしょんぼりとして、元気がなくなりました。かつての友人らに“おすぎが死んだ”“お骨になって帰ってきた”と、事実ではないことを言いふらすようになり、周囲は困惑していました」(前出・ピーコの知人)

 ひとり暮らしに戻ったピーコは冒頭のように買い物に出かけるなど身の回りのことを自身でこなしていたが、体調には波があったという。

「週に一度、行政のかたが様子を見に来ていました。体調がよければ散歩や買い物に出かけられますが、調子が悪いと部屋からずっと出てこないこともあったそうです。室内にはゴミがたまり、身の回りのことができなくなっていきました」(前出・ピーコの知人)

 本人が「気楽」と明かした生活を周囲が心配し始めた矢先の3月25日、午後3時に事件は起きた。

「ピーコさんが逮捕されたんです」

「買い物に訪れていた店で、ピーコさんが万引き(窃盗罪)で逮捕されたんです。お店側は以前からピーコさんの買い物の様子が気になっていたようですが、名前のあるかただし何かの間違いだろうと考えていた。ですが万引きを繰り返していることがわかり、警察に通報したようです。本人は“代金はカードで払った”と話していましたが、クレジットカードは使用停止に陥っていて使えなくなっていました。逮捕された店だけではなく、自宅周辺の複数のお店が警察に相談していたようです」(前出・ピーコの知人)

 認知症患者の万引きは、法的に罪を問えるのだろうか。岡野法律事務所九段下オフィスの伊倉秀知弁護士が解説する。

「認知症のかたが万引きした場合、責任能力の有無が問題になります。良い悪いを判断する能力と、その判断に従って行動する能力の両方またはどちらかが欠けていれば、“心神喪失”とみなされて罰せられません。また、2つの能力の両方またはどちらかが著しく減退している場合は、刑が軽減されます。罪に問われるかどうかはケースバイケースですが、立件されないケースも少なくありません」

 逮捕後、ピーコは釈放され、自宅には戻らず施設に入所した。

「行政の担当者が、代理人弁護士と話し合って処遇を決めたようです。ひとり暮らしはもう難しい状態で、身寄りもなく頼れる人もいない。そこで施設に入所したようですが、おすぎさんとは違うところにしたそうです。ピーコさんの逮捕はごく親しい人にしか伝えられず、携帯電話も解約してしまったので、知人や友人らも連絡が取れない状態が続いています」(前出・ピーコの知人)

 これがピーコ失踪のてん末のすべてだった。

身寄りがない高齢者を把握することが難しい

 超高齢社会が到来するなか、ピーコに起こった出来事は決して他人事ではない。近年、高齢者の犯罪が目立っている。法務省の『令和4年版犯罪白書』によると、刑法犯検挙件数は減少傾向にあるが、検挙件数に占める高齢者の割合は年々上昇している。

 2021年における高齢者の検挙人数の罪名別比率は「万引き」が51.0%でトップ。女性だけを見ると72.3%と顕著に高い。加えて、認知症の患者も増加傾向にある。内閣府が集計した『平成29年度高齢社会白書』の推計では、2012年に15%を占めた認知症の患者数が、2025年には20%まで増加するという。そうなれば「認知症患者による万引き被害」のさらなる増加が懸念されるのだ。

 認知症患者と万引きの関係性を、メモリークリニックお茶の水院長の朝田隆さんが「あくまで一般論ですが」と前置きした上で解説する。

「万引きを繰り返すのは、“前頭側頭型認知症”の一種である“ピック病”の可能性があります。脳内の倫理観やモラルなどを司る眼窩面と呼ばれる部位が侵されることで、万引きや放火などの反社会的な行動を引き起こすといわれています。コソコソとすることなく、堂々と犯行に及ぶのも特徴のひとつです。ピック病を患うと反省することもなくなるので、注意されても繰り返してしまいます」

 近年、万引きを繰り返す認知症患者に対し、「入店禁止」の措置をとるスーパーやコンビニが増えている。厳しい措置にも思えるが、店側の立場では避けられない対応なのかもしれない。

 認知症が引き起こす“問題行動”はほかにもある。警察庁によると、2021年に警察に出された行方不明者届のうち、認知症やその疑いで行方不明になった人は延べ1万7636人に達する。行方不明者数そのものは減少しているが、認知症患者の「徘徊」を理由にした行方不明者数は過去最大を記録した。

「徘徊を始めるのは、認知症で最も多い“アルツハイマー型”の患者がほとんどで、“レビー小体型”の患者にも見られます。脳の海馬や前頭葉などが侵されることで、方向感覚や見慣れた景色も覚えていないという症状が出ます。行き先がわからなくなり、徘徊につながります。妄想や暴言・暴力もアルツハイマー型の患者に多く見られます」(前出・朝田さん)

 朝田さんによれば「ひとり暮らしの認知症患者は、他人と話したり接したりする機会が少なく、認知症の進行が早まりやすい」という。身寄りがない認知症を患う高齢者が増えているが、その状況に行政も頭を悩ませている。介護ジャーナリストの末並俊司さんが解説する。

「そもそも身寄りがない高齢者を、行政が把握することが難しい。地域の民生委員の活動や近所づきあいがあれば情報を行政につなげるが、都市部ではそうしたシステムが行き届いていません。本人が行方不明になるだけでなく、火の始末ができずに空だきをしてボヤを起こすなどのトラブルも生じています」

 把握が難しければ、トラブルを予防することも簡単ではない。では、彼らとどう向き合っていけばいいのか。高齢者問題に詳しい追手門学院大学社会学部教授の古川隆司さんが提案する。

「認知症の初期段階でその症状を自覚している人のなかには、認知症で起こるミスが周囲からどう見られるかを気にする人も少なくありません。彼らがミスを恐れて萎縮した生活を送ると、外の世界との関係を断ち孤立してしまう。認知症患者の行動を理解し許容する柔軟さが必要です。高齢者の孤立や認知症患者の犯罪、徘徊などの増加が予想されるなか、社会全体でこうした人々を受け入れる姿勢も求められるのではないでしょうか」

 ピーコとおすぎは、これまでも衝突と雪解けを繰り返してきた。5分早く生まれたピーコは、いつもおすぎを気にかける弟思いの兄だった。50年ぶりの同居を始める直前には、「おすぎの具合が悪くなっちゃって、嫌だけど私が面倒をみてやらないとダメなのよ」と、うれしそうに話して回っていたという。

 しかし皮肉にもその同居が“最後”の衝突を生み、その後のひとり暮らしが、ピーコの認知症の進行を加速させてしまった可能性もある。別々に暮らす2人に、もう雪解けは訪れないかもしれない。だが離れて暮らすおすぎを、ピーコはずっと気にかけていたように思えてならない。シャンパン好きを公言してきたピーコが最近、決まって手に取った酒は、おすぎが大好きな瓶のウイスキーだった。

※女性セブン2023年5月4日号