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【1日だけのお父さん】青空と向日葵の会

【一日だけのお父さん】
これは15年前の話なのですが、私が28歳の時の事、
仕事の昼休みに公園で弁当を食べていたら小さい男の子が近寄って来て、
「お父さんっ!明日運動会見に来てよ」と言った。
私は、その男の子の言っている意味が分からなかった。
すると、「すいません!」と言いながら男の子の母親がやって来た。
私は顔を上げるとその母親もビックリするような顔で私を見ていました。
母親に話を聞くと「主人は半年前に他界した」と言いました。
その死んだ御主人に私が似ているらしく、子供が間違えたらしい。
男の子は5歳でまだ父親の死を知らなかった。
というより、人が死ぬという事に理解ができていなかった。
だから、私を父親と間違えたのだろう。
私は、その男の子の「絶対!運動会来てよ」の言葉に泣きそうになった。
その頃、趣味もない恋人すらいない私にとって休日は苦痛だった。
私は母親に「息子さんの運動会に行ってもいいですか?」と聞いた。
母親は「いいのですか?お願いします」と嬉しそうに言った。
そして、次の日の運動会に私は気合いを入れて上下ジャージ姿で幼稚園に行きました。
プログラムなどを見ると父と子の障害物リレーなど、様々な所に親子対抗の競争があった。
私は男の子の手を握りしめ必死に走り回った。すごく楽しい1日でした。
運動会も無事終わり男の子との別れ際に「お父さんはオウチに帰らないの?」
の言葉に私は自分が嫌になった。
たった1日とは言え男の子を父親だと騙して運動会へ行った事を後悔した。
それから何日かが経ち、私は男の子の母親に「息子さんのお父さんにならせて下さい」と言った。
母親は「はいっ!」と答えた。
あれから15年が経ち今日息子は20歳になります。
15年前のあの日、息子が公園で私の事を父親と間違えた事に感謝します。
たとえ血が繋がっていなくても、運動会の日から私と息子は親子なんです。
~息子へ~
20歳の誕生日おめでとう。 父より