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工藤会系「半グレ」、中洲のガールズバー無許可営業で数億円売り上げか…福岡県警が3人逮捕へ

 福岡市・中洲で、ガールズバーを無許可で営業したとして、福岡県警は20日、元暴力団組員の男(43)ら3人を風営法違反(無許可営業)容疑で逮捕する方針を固めた。捜査関係者への取材でわかった。男は、特定危険指定暴力団工藤会(本部・北九州市)幹部の配下で活動する「半グレ」グループの一員とみられる。県警は店が2018年以降、少なくとも数億円を売り上げ、一部が工藤会の資金源になっていた疑いがあるとみて、組織犯罪処罰法違反(犯罪収益収受)容疑も視野に実態解明を進める。

 逮捕状が出ているのは、同市博多区中洲2の会員制ガールズバー「VIBLISS」の実質的な経営者で指定暴力団道仁会(同・福岡県久留米市)の元組員の男(43)と、同店の関係者2人。

 捜査関係者によると、男らは19年から23年春頃、同県公安委員会の許可を得ずに、同店で従業員に客の接待をさせた疑いが持たれている。

 同店は18年頃に開店。県警は警察の摘発を警戒して会員制にしていたとみており、会員は配下の客引きからの紹介や、女性従業員がマッチングアプリで知り合って来店を呼びかけた客に限られていたという。県警は、同店が1か月に約1000万円を売り上げていたとみている。

 男は道仁会を離脱後、半グレグループに所属。昨年6月に工藤会ナンバー4の「理事長代行」に就いた幹部の配下だったという。

 県警は今年1月、全国で初めて半グレの取り締まりを専門に行う「準暴力団等集中取締本部」を県警本部に設置。暴力団の資金源遮断に向けて、半グレの捜査を進めていた。

 半グレを巡っては、県警は21年10月、違法な高金利の利息を受け取ったとして、工藤会の理事長代行の配下の男らを出資法違反容疑で逮捕。同年12月~昨年4月には、覚醒剤約7キロを密輸したとして、警視庁が「チャイニーズドラゴン」の構成員の男や暴力団幹部らを覚醒剤取締法違反の疑いで逮捕するなどしている。

  ◆半グレ= 暴力団対策法の適用対象外だが、薬物の密売や恐喝、特殊詐欺などで資金を得ているとみられる集団で、暴走族「関東連合」のOBグループや、中国残留孤児2世らでつくる「チャイニーズドラゴン」などがある。警察当局は「準暴力団」と位置づけているが、指揮命令系統が明確ではなく離合集散が繰り返されるため、実態把握が難しいとされる。

勢力保つ指定暴力団の道仁会と浪川会 資金源が多様化・構成員も若く…福岡県警が摘発を強化

 福岡県の筑後地区を拠点とする指定暴力団の道仁会(本部・久留米市)と浪川会(同・大牟田市)の組員らの摘発に、県警が力を入れている。2018年に「 筑後地区暴力団集中取締本部 」を発足させて以降、県警は両組織の幹部ら延べ229人を摘発したが、両組織は若手組員の加入や資金獲得活動の多様化で、弱体化を食い止めている状況がみられるためだ。

ナンバー3逮捕

九州誠道会系組長の射殺事件で、道仁会本部事務所の捜索に入る福岡県警などの捜査員
(10月27日、福岡県久留米市で)

 取締本部や熊本県警などは今年10月、浪川会の前身、九州誠道会系の組長(当時50歳)が08年9月に大牟田市で射殺された事件で、当時抗争状態にあった道仁会ナンバー3の坂本康弘被告(67)ら4人を殺人と銃刀法違反の疑いで逮捕した。

09年に実行役の道仁会系組幹部が逮捕され、公判では「組織的犯行」と認定された。しかし、指示役などは明らかにならなかったため、福岡県警は組員や元組員への聴取を継続。捜査関係者によると、坂本被告が「『何で(抗争に)行かんのか。いつまでかかるんか』と組内で 檄げき を飛ばしていた」との供述を引き出し、事件を指示したとみて逮捕に踏み切った。

 事件では4人のうち坂本被告を含む3人が、殺人と銃刀法違反の罪で起訴された。捜査幹部は「発生から時間がたっても、粘り強く捜査を続けて逮捕するという姿勢を示せた」と語る。

九州最大規模

 県警によると、昨年末時点の道仁会の全国の勢力(構成員、準構成員など)は福岡、佐賀、長崎、熊本の4県で700人に上る。九州に拠点を置く暴力団としては最も規模が大きいとされ、特定危険指定暴力団工藤会(本部・北九州市)の460人を上回る。浪川会は4県や山形県、東京都で270人が確認されている。

 また、工藤会の福岡県内の勢力はピーク時より約7割減っているのに対し、道仁会は05年、浪川会は12年のピーク時から、いずれも約4割の減少にとどまっている。

 その理由の一つが、若者の組織への加入とみられている。県警によると、昨年末時点では、組員の平均年齢は道仁会が47・5歳、浪川会が47・3歳で、工藤会は54歳。20歳代の割合は道仁会が8・4%、浪川会が4・8%で、14年以降で最も高くなった。

専従班が捜査

 

 取締本部が設置される前年の17年までは、県内の1年間の暴力団組員の摘発は工藤会が最多だったが、設置以降は道仁会に代わり、11月末時点で延べ182人。浪川会は同47人に上る。

 取締本部は、19年に専従班を新設し、両組織の資金源を断つための捜査にも力を入れている。

 21年2月には、福岡市・中洲でキャバクラ店を無許可で営業したとして、道仁会幹部(上告中)を風営法違反容疑などで逮捕したが、幹部は約3年間で少なくとも2億9000万円を得ていたとみられている。

 また、同年6~7月に恐喝未遂容疑で逮捕した道仁会系組長は、暗号資産に数千万円を投資していたことが判明。この組が所有する久留米市内の倉庫で密売用とみられる違法薬物も発見し、組員らを逮捕した。

 捜査幹部は「組員や資金を提供する関係者の摘発、組員の離脱支援を一層強化し、両組織を壊滅に追い込みたい」としている。

筑後地区暴力団集中取締本部  2012年に全国で初めて「特定抗争指定暴力団」に指定(2014年に解除)された道仁会と浪川会の壊滅を目指し、18年10月、福岡県警本部内に設置された。県警の暴力団対策部や刑事部など五つの部と筑後地区(久留米、大牟田、八女市など)を中心とする9署で構成。捜査員約200人態勢で、未解決事件の捜査や情報収集、組員の離脱支援などを行う。

工藤会への捜査で存在浮上…性的サービスする「メンズエステ店」、複数マンションで

 違法なメンズエステ店を経営したなどとして、福岡県警は5日、福岡市中央区の飲食店代表取締役の男(49)、同市博多区の派遣社員の男(40)ら4人を風営法違反容疑で逮捕したと発表した。認否は明らかにしていない。

 発表では、4人は共謀して昨年2~4月、県条例で店舗型性風俗店の営業が禁じられている博多区のマンションの部屋で、男性客への性的サービスを女性従業員にさせた疑い。同様に使用していたマンションの部屋が他にも複数あり、遅くとも2020年9月頃から、SNSで客を募るなどして同様の営業を繰り返していたという。飲食店代表取締役の男がオーナーで、派遣社員の男ら3人が女性従業員の手配などを担っていたとみられる。

 県警が一昨年9月、別の事件に絡み、特定危険指定暴力団工藤会系組幹部を恐喝未遂容疑で逮捕した際の捜査の過程で、性風俗店の存在が浮上。県警は、店の売り上げの一部が工藤会に流れていた可能性もあるとみて実態解明を進めている。