· 

嗚呼、悲しくも消えてしまった懐かしの装備&カスタム文化「総集編・前編」

かつて一世風靡、いまや絶滅危惧種。
どこか懐かしいアフターのシーンを振り返る

ファッションといえば、トレンドが目まぐるしく変化していく。
クルマも同じであり、RVブームやミニバン全盛期など、その時代ごとにウケるジャンルがありました。コレはカスタム文化も然り、なのです。
「ついこの前まで流行ってたけど、最近は見かけない」、そんなカスタム内容や自動車のアクセサリー関連を懐かしく振り返る総集編。あの頃にハヤっていたシーンを、前編と後編に分けてお届けしましょう。

【Tシャツとバンダナ】

車種別のシートカバーがなき時代のお手軽アレンジ

“部屋とYシャツとワタシ〜♪”と聞いて懐かしむ世代は、ご存知のはず。
そう、80’〜90’年代の内装アレンジで流行ったのが、クルマのシートとTシャツ&バンダナとのコンビ。
当時、車種別シートカバーはレアであり、シートを飾るアイテムといえば白のレース地やタクシードライバー御用達の数珠カバーくらいなもの。そこで若者が実践したのが、Tシャツをパツパツに被せるという手法。アメカジやサーファースタイルがナウかった当時、Tシャツの柄は”ハードロックカフェ”や”I ♥ NY”が人気だったような。
そして、ヘッドレストは”バンダナ”でコーデ。定番はペイズリー柄で、運転席と助手席の色を変えるなど、それぞれの個性を楽しんだものです。

 

【クリアテール】

灯火類は”透明”がオシャレだったあの頃

2000年前後に流行したカスタムのジャンル、アメリカンやヨーロピアンVIP。
定番のアフターパーツといえば、テールランプでした。現代でこそLEDやシーケンシャルウインカーの搭載などで進化しているものの、当時の主流はレンズカバーの色を変えるというもの。特に人気を誇ったのがレンズカバーの色味をなくした『クリアテール』だったのです。
当時の純正レンズカラーといえば、ウインカー部分がオレンジでブレーキ部がレッド。そんな定番から脱却すべく、テールランプのクリア化がウケたのであります。当然ながら、ウインカー用にアンバー、ブレーキ用としてレッドに光るバルブの交換が必要。車検で必要なリフレクターもテールランプに内蔵されなかったため、検査時は別途バンパーなどに貼らなければなりませんでした。
このクリア化は、サイドマーカーやヘッドライトのウインカーにも派生。灯火類をすべてクリアにするのがトレンドだったのです。

 

【CDチェンジャー】

青春がギュッと詰まった音楽メディアボックス

音楽を聴くためのメディア。それまでのカセットテープからCDへと移行したのは、80年代後半になってから。ヘッドユニットではカセット、CDはチェンジャーというマガジン内に音楽アルバムをセットするのが定番でした。
6連奏や8連奏といった風に、長時間の連続演奏や複数枚からの任意再生など、その利便性はカセットテープを遥かに凌駕。その後、MDが登場したとはいえ、コチラの普及は限定的。長らく人気は続きましたが、音楽配信サービスやアプリなど、近年の視聴形態は変化。CDを見かける機会はメッキリと減少しました。
ちなみに、彼女とのムードを上げるためにオリジナルのラブソング集を収録。デート前になれば、トランク内や助手席の足元にあるCDチェンジャーにセット、という作業を行なった方もいると思います。
かつて「80’s洋楽」や「邦楽ベスト」といった自分だけの1枚を作った人は、立派な中年になっているのではないでしょうか。

CDチェンジャーは、30〜50代にとっての青春。あの独特の動作音、マガジンが出てこなくなったトラブルも懐かしい思い出。ちなみに、大手メーカーのラインアップを調べると皆無。ちょっぴり悲しい現実を知ることになりました。

【ネオン管】

“ヒカリモノ”メイクの先駆者は内外装で大活躍

路面へ光を照らし出す。車底から下に向けて照射された鮮やかなヒカリの演出、アンダースポット。
ブームは、スポコンがブレイクした2000年前後まで遡ります。この『ネオン管』が放つカラフルな発色と蛍光灯のような風合いは、車外だけでなく車内にも活用されました。シガーソケット電源という手軽さも魅力。4連や6連のソケットに増設しては、車内を鮮やかに照射していたものです。挙げ句にはブラックライトタイプといった進化系まで登場しましたが、LEDパーツの登場でめっきりと減少。特有の柔らかい光でカラフルに演出する車は随分と見かけなくなりました。
ちなみに、ドリフト系ではストロボが人気。他にもミニバンではオモチャのお魚が泡と光で泳ぐ”水槽”というのもありましたね。いま思えば、”ヒカリ”を楽しむカスタム文化の先駆けだったのかもしれません。

 

【エアロミラー】

走りを予感させる流麗フォルムで一躍大人気に

いまから15〜20年前、”スポコン”がブレイクし、一大ムーブメントに。そんなアレンジの真打ちだったのが『エアロミラー』。
コンパクトで流麗なフォルムは、”Gr.A”や”JTCC”といったツーリングカーレースのマシンを彷彿。スポーツ性を打ち出せることで、日産180SXやシルビア、スカイラインなどで大流行しました。この流れは、国産ワゴンユーザーにも波及。カーボン調やウインカー付き、車検対応の可倒式など、見た目や機能性を高めて独自に進化を遂げたのであります。しかし、車種を問わずにオーソドックスなデザインだったドラミラーは、ウインカーを内蔵したスタイリッシュなデザインが増加。もはや、交換するメリットは減ったのかもしれません。

 

【置き型スピーカー】

ブレーキでレッドに点灯。窓越しに見えるイルミネーション

かつて、リアシ−ト背面にあるトノボード上にあったものといえば、「置き型のリアスピーカー」。
純正よりも幅広い音域を出せることから、当時のハッチバックやセダンの窓越しによく見かけたものです。
1万円を下回るノーブランドから、2万円を越える一流メーカーまでバリエーションも豊富。個人的には、スピーカー背面部のブランドロゴが点灯する「イルミ搭載モデル」に憧れておりました。

この置き型スピーカーの魅力と言えば、低音再生もこなす3ウェイや4ウェイ方式だったこと。コチラもめっきりと見かけなくなりましたが、現在も一部メーカーで僅かにご健在しております。

【跳ね上げマフラー】

音も見た目の迫力もデカいが偉かった

VIP系エアロが全盛だった2000年前後。そんな押し出しの強いデザインと組み合わせられたのが”跳ね出し”マフラーでした。

袴のように張り出されたエアロから、ニョキっと斜めに飛び出したテールエンド。重低音が轟ろかせながら走るVIP系ミニバン&セダンが元気だった当時は、マフラーの規制も緩いものでした。重低音なサウンドと、刺激的なデザインが重要視された時代。いまでは考えられないような音量や鋭利なテールエンドを持つマフラーが蔓延していました。

現在は、加速時の音量やアールを帯びたエンドの採用など、規制を強化。美しい音質や落ち着いたデザインが求められ、これまでとは異なる楽しみ方へと変化していったのです。

トンネルに入ればアクセルをベタ踏み。家の近所でサイレンサーを付けて静かに帰る…。そんな光景はいまでは皆無。マフラーは音も見た目も”静か”に主張するのがイマドキなのかもしれません。

嗚呼、悲しくも消えてしまった懐かしのクルマのカスタム文化「総集編・後編」

かつては大ブレイク、いまや絶滅危惧へ
そんなアフターのシーンを振り返り

クルマのアフターパーツや飾り方は、この20年ほどで大きく様変わりしました。
例えば、エアロパーツ。かつてのミニバンやセダンのカスタムでは大きく張り出した形状が人気を集め、存在感を主張するバンパータイプが流行。アフターメーカーの技術力が高まった現在では、迫力よりも個性を主張するデザインに。3D造形やLED内蔵など、流行に合わせて進化と変化を遂げてきたわけです。
そんな一昔前のアフターシーンにおいては”身近な流行”も。クルマ好きだった人(30代以上)でもわかる栄枯衰退を振り返る総集編。後編をお届けしましょう。

【ウーファー】

“大きいほどいい”からコンパクト設計がウケる時代へ

「ズゥドゥ〜ンドゥ〜ン…」と、車外へ漏れる重低音。
迫力の低音域を放つ発信源が『(サブ)ウーファー』ですが、最近は威勢のいい”音の響き”を街中で聞かなくなりました。かつて、大阪キタ(梅田)の商業ビル施設前には、重低音を放ったローライダー系やミニバンに乗る若者が集結。クルマも然りですが、大音量でアピールすることが見せ場だったワケです。
必ずしもその影響ではないにせよ、90年代は「重低音=カッコいい」。マフラーも低音が人気を集めるなど、カスタム車乗りにとって音は重要でございました。

あれから約20年。
ラゲッジ&トランク内へ巨大なボックスが鎮座していたものが、現在はコンパクトなものに。シート下に置く小型タイプや薄型設計など、スペースを取らないウーファーが主流となりました。すなわち、『ウーファー』という音響文化が消滅したわけではなく、”魅せる”から”隠す”時代になったわけです(ショーカーやイベント向けユーザカーは別)。

当時は、「デカくてうるさい」に共感してくれた女子が数多くおりましたが、いまはきっと理解してくれないでしょう…。

【ボンネットマスコット】

ボンネット先端に鎮座する高級欧州セダン的なシンボル

ボンネット先端にある装飾品といえば『ボンネットマスコット』。
メルセデス・ベンツの「スリーポインテッドスター」や、ロールスロイスの「スピリット・オブ・エクスタシー」などは、まさに高級欧州車の象徴的な存在でした。国産車では、日産シーマが有名ですが、アフターマーケットでも”ボンマス”という呼称で続々とラインアップされていましたね。この”ボンマス”はセダンやミニバン乗りを中心にブレイクし、高級車風メイクとして格好の素材となったわけです。

ところが、平成13年度に外部突起に関わる保安基準が改訂し、先出の自動車メーカーも格納式や可倒式へと移行。カスタムの世界でも”平成21年以降の生産車への後付け装着は車検に通らない”という噂が出回るなど、徐々に減少へ。
とはいえ、VIPメイクの象徴的は、古き良き高級車のイメージとして、いまでもフリークたちの愛車で輝き続けているのです。

 

【ムートン】

高級な演出が必須だった90年代の内装マストアイテム

’80〜’90年代初頭。セドリック、クラウン、マークIIといった「ハイソカー」のシートといえば、ワインレッドやブルーなど、ナウい色合いが採用されてました。
バブルの影響なのか、シートデザインも応接室にあるソファーのような…。ちょいとテカリのあるモケット素材も然り、まさに”昭和の豪華絢爛”だったのです。バブリーな内装は、お父さん世代には懐かしく、若者には斬新に映るでしょう。そんな当時からしばらくして、流行した内装カスタムといえば、これまたバブリーな『ムートンカバー』。羊の毛皮を使ったモコモコなムートンは、ゴージャスな見た目が特徴で、シートカバーやフロアマット、ダッシュボードマットで恰好の素材に。

なかでも支持されていたのがセダン乗り。セカハン(セカンドバック)を脇に抱え、颯爽と愛車に乗り込む…。ドアを開けた際に目に飛び込んでくる”土足厳禁”のステッカーも印象的でした。助手席の足元には、靴を置くためのトレーを設置し、フロアマットやシートを汚さないように徹底したのです。

 

【ワンアームワイパー】

真ん中で固定するとレーシングカーのテイストへ

雨の日に欠かせないワイパーを、名のとおり1本にして斜めに固定したのが『ワンアームワイパー』。
80年代に入ってからスポーツカーやワゴンのスポーツメイク系で人気を呼びました。根源は、DTMやGTなどのレーシングカーであり、超高速走行で空気抵抗の低減やバタ付きを抑えるために採用されていたもの。とはいえ、市販車で2本あったものを1本にするメリットは、拭き取る面積が狭くなるため皆無。レースカーをイメージさせる、あのワイパー位置がカッコ良かったのです。

ワイパーブレードを長いものに変更したり、ワイパーを動かすモーターを加工するなど、拭く面積を広げるための努力も。じつは、日産・シルビアやホンダ・プレリュードといったスペシャリティーカーが採用。M字に作動する構造で注目を浴びたメルセデス・ベンツなど、ワンアーム構造は純正でも使われていたのですね。

 

【高級ブランド品の活用】

ロゴのチラ見せで最も手軽だった”M●M”のタオル

 

ヴィ○ンやグッ○といった高級ファッションブランド品を使った、なんともセレブな内装カスタム。
例えば、ドアの内張りサンバイザーを張り替えた、ブランドロゴのチラ見せが流行。高級ブランドの生地をクルマに取り入れるという斬新さがウケたのです。本物のバッグを使って縫製するツワモノもいましたが、ブームを受けて内装カスタム用のコピー生地まで販売されるという始末。張り替えということで施工工賃も決して安いものではなかったのでした。

そんな”ブランド魅せ”で、最も手軽だったのがタオル。
なかでも「M●M」のフェイスタオルは、敷くだけという手軽さも手伝って、センターコンソールやアームレスト上でよく目にしたものです。そう、濃いめのベージュカラーに特徴的なブランドロゴ。
「とにかく高級感!」という意識が高かった当時は、ブランド品を取り入れることがステータスだったんですね。

近年のファッション界でも、ブランドロゴを主張するバッグやウェアは少なくなったような…。いまは「バブリ〜♪」をアピールする時代ではなくなったようです。

 

【フルスモ(フルスモーク)】

ウインドウから放たれる圧倒的な威圧感

かつてはヤン車のイメージが強かったものの、90年代を中心にセダンのカスタムカーでも『フルスモ』は健在。フルスモとは”フルスモーク”の略で、リアガラスだけでなく運転席と助手席のウインドウにもスモークフィルムを貼ったもの。さらにフロントガラスまで貼った、正真正銘の”フルスモ”もありましたね。当然ながら立派な整備不良。明らかな違反行為もヤン車の象徴であり、その怪しさからも職質や車内検査に遭遇する率が高かったと聞いてます。

しかし、車検のたびに剥がす面倒な作業や、セダンのカスタムにおいてもスモークフィルムを貼らないのがトレンドに。現在も稀に見かけますが、随分と減った気がしませんか?

 

【フラワーレイ】

車内はイッ気にハワイア〜ン♪

 

『フラワーレイ』といえば、ハワイの空港に到着したら首にかけてもらえそうなヤツ。
色とりどりなタイプや単色など、美しく模造された花を連ねた首飾りって感じですね。コレをモチーフにしたアイテムをルームミラーに掛けたり、ダッシュボードに置いたり、2000年前後の一部ドレスアップカーでブレイク。車内を一気にトロピカルに演出できる手軽さもあって、アメリカンやキャルメイクを中心にウケました。

近年では、フレームにデコーレーションやデザインを加えたカスタム系ルームミラーが増加。ルームミラーまわりでユラユラと揺れるレイで視認性が悪くなるよりも、スッキリとしたドレスアップへ移行していったのです。
そういえばレイを飾ったクルマには、リヤワイパーをレス化して花のマスコットキャップを装着するのも定番。くるくると半回転しながら回る「ワイパーマスコット」も、見かけなくなりました。

 

【顔面移植】

異なる車種のフェイスを流用したコアな上級メイク

最後は、少々マニアックなテーマ、『顔面移植』について。
トヨタ・セルシオといえば、高級車シーンをリードした存在。そんな名車をインスパイアするカスタムの手法も存在するわけで、外品のエアロパーツにまで影響を及ぼしていました。例えば、このセルシオ。当時は、その空気感こそ究極のステータスであり、ならば”丸ごとイメージを移植しちゃおう”っていうのが流行。それが、初代エスティマへ20系セルシオのバンパーやヘッドライト、フロントグリルに変更した『セルティマ』です。
一部はフェイスキットがリリースされるなど、”顔面移植”はおおいに注目を集めました。バックミラーに映るセルシオがミニバンだったワケで、車種不明なインパクトも魅力のひとつ。他にも、シルビア顔の180SX「シルエイティ」、その逆の「ワンビア」が有名でしたね。

皆さんにとっての懐かしいカスタム&車文化はございますか?

オシマイ