時を越えて、困ったときに受け取ったお小遣い


年ほど前、僕は失職した。

原因は鬱病。戦力外通告を受けての自主退職。

事実上のクビだった。

鬱病が治るまでは実家に世話になる事になったが、
通院費くらいは自分でなんとかしようと、貯金から払っていた。

だけど、2年間もの通院の果てに、
ついに手持ちの金も底をつきかけてしまった。

そこで、もう読まなくなった本やCD等の雑貨を中古屋に売り、
通院費をなんとかまかなおうと考えた。

手放す品は全部で19点。

古い物ばかりなので、せいぜい2000円程度になりゃいいかな、と思ってた。

そんな品々をリュックに詰め込み、原付であちこちの店をまわった。

古すぎて買い取れない、という品も幾つかあり、結局合計で1680円に終わった。

でも、清々しい気分だった。

それは、最後の店でリュックから品を全部取り出している時、
リュックの底に小さく折りたたまれたお金が入っていることに気付いたから。

ちょうど2000円。

僕はお金はすぐに財布にしまうから、こんなところにお金を入れた覚えは無い。

色々考えているうちに、ふと昔の出来事を思い出した。

 

が鬱病で失職した2年ほど前の時期、
心配した祖母が家まで来てくれたことがあった。

「今後困ることになるだろうから」
と、少ない年金から2000円、僕に渡そうとしてきた。

その時はまだ失職直後で、こんなに通院が長引くとは思っていなかったから、
「貯金がまだあるからいいよ、受け取れない」
とかたくなに拒んだ。

いつもなら小さく折りたたんだお金を、
無理矢理にでも僕の手に握らせる祖母は、その日は珍しく引き下がった。

その時このリュックは、チャックを開けっ放しにして壁に掛けてあったんだ。

2年越しの時を越えたお小遣いを、本当に困ってる時に貰うことになった。

あまりに時間が経ち過ぎて、
直接お礼を言うことなんて照れくさくて出来ないけど、
本当に、祖母を大事にしようと思った。

そして心から感謝したい、おばあちゃんありがとう。

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コメント: 1
  • #1

    小田原から愛をこめて (水曜日, 15 6月 2016 07:34)

    苦しい時は誰にでも有るよね。そんな時に人の優しさがしみるよね。本当に。