出所後の職場は歌舞伎町…再犯防ぎ社会復帰促す居酒屋

「ご注文いただきました!」「はいよ! ありがとうございます!」――。歯切れのいい声が店内に響き、満席となったテーブルの間をスタッフがすり抜ける。日本最大級の繁華街、東京・新宿の歌舞伎町で、刑務所を出た人がスタッフとして働く居酒屋が盛況だ。刑期を終えたものの、住居や就労の場が得られず、生活苦から再犯に至る例も多い出所者に、働く場所を提供することで生活の基盤を安定させ、再犯防止と社会復帰を促す試みだ。検挙者に占める再犯者の比率は近年、増加を続けており、歌舞伎町発の試みが「歯止め」の一策になるか注目されている。(仙波理)

 居酒屋の名前は「新宿駆け込み餃子(ぎょうざ)」。4月末に開業した。出所者の社会参加や復帰の機会拡大を目指す一般社団法人「再チャレンジ支援機構」が運営する。理念に賛同した元最高検察庁検事の堀田力さんが代表理事を務める。「ゴジラビル」として新宿のランドマークになった「新宿東宝ビル」至近の歌舞伎町のほぼ中心だ。店の入り口には「再チャレンジ支援機構協力店」の看板が掲げられているが、出所者が働いているという文言はない。

 横浜市から来た男性客(30)は「出所者が働く店とは知らなかった。おいしい餃子を食べることが支援になるならいいですね。歌舞伎町では、どんな人が隣にいても不思議じゃない」。

 出所者の支援組織から紹介されたり、インターネットで店の存在を知った親族のすすめで応募してきたりした3人の出所者を含め、10人ほどのスタッフが店を切り盛りする。

 過去に傷害事件を起こしたスタッフの男性(30)は「『どん底』を味わったからこそ、はい上がるしかない。16歳から一人暮らしで、孤立しがちだったけれど、今はみんなに囲まれて充実している」。採用されるまで肩が隠れるほど伸ばしていた髪をばっさりと切った。この店で「正社員」になることを目指している。

 支援機構の玄秀盛(げんひでもり)理事は「刑務所での生活が長いと他人との意思疎通が難しくなる。様々な人が行き交う『懐の深い街』歌舞伎町で取り組む意味は大きい。出所者の社会復帰は、犯罪被害者を新たに作らないことにもつながる」。

 店内やスタッフのいでたちは「江戸火消し」をイメージしている。延べ床面積約100平方メートルの2階建てで、1階が20席、2階に30席。宗片(むねかた)一英社長(35)は「江戸火消しは出火した近隣の家々を壊して延焼を防いだ。火事で更地になった場所から街が新しく復興するように、出所した人もゼロから再生して欲しい」という願いを込めた。