JC制覇エピファネイア、世界最強へ。掛かっても突き抜けた「圧勝」の裏側。

多くのファンが「勝つ可能性がある」と思っていたことは、単勝8.9倍の4番人気という支持が示していた。しかし、どれだけの人が、これほどの圧勝劇を予想していただろう。

 超豪華メンバーの競演となった第34回ジャパンカップ(11月30日、東京芝2400m、3歳以上GI)を制したのは、クリストフ・スミヨンを背にした昨年の菊花賞馬、エピファネイア(牡4歳、父シンボリクリスエス、栗東・角居勝彦厩舎)だった。

 ゲートがあいて、まず飛び出したのは14番のサトノシュレンだった。12番のタマモベストプレイが2番手、エピファネイアは引っ張り切れないほどの手応えで3番手の内につけた。

 「パドックでも入れ込んでいたし、乗ってからも興奮気味で、馬場入りのときは落とされるかと思った。2、3番手で我慢し、コーナーごとに抑えようとしたが、実はそれもままならないほど、前に行きたがっていた」

 スミヨンがそう振り返るように、エピファネイアは道中ずっと掛かり気味のままレースを進めた。

3連覇を狙うジェンティルドンナに生じていた異変。

 3連覇を狙う1番人気のジェンティルドンナは、エピファを4、5馬身前に見る馬群の内で折り合っているように見えた。しかし、騎乗したライアン・ムーアは、その走りに不安を感じていた。

 「馬場がゆるく、地面を上手くグリップできていなかった。仕上がりはよかっただけに、昨日の雨が残念です」

 3番人気のジャスタウェイは、そのジェンティルの2馬身ほど後ろの内埒沿いにポジションをとった。手綱をとった福永祐一が、「道中はスムーズで、直線を理想的な迎え方をすることができた」と話しているように、いつでも突き抜けられそうな雰囲気だった。

2番人気ハープスターをアクシデントが襲う。

 対照的に、アクシデントに巻き込まれた有力馬もいた。2番人気の3歳牝馬、ハープスターである。

 3、4コーナー中間で故障を発生して下がってきた外国馬のトレーディングレザーに接触し、つまずいてしまったのだ。

 「目の前だったので、避けるのが間に合わなかった。それなのに、よくここまで来てくれたと思う。何より、馬が無事でいてくれるといいのですが」と鞍上の川田将雅は言う。

 実は、これも勝負のアヤと言うべきなのか、馬1頭ぶんの位置取りの差が明暗を分けた。

 故障したトレーディングレザーの真後ろには横山典弘のワンアンドオンリーがいて、川田のハープスターはその直後につけていた。

 トレーディングが骨折する直前、動きに異変を感じた横山はすぐさま手綱を操作してワンアンドオンリーを外に出し、接触することなくスパートをかけた。このように、周囲の騎手が、故障しそうな気配を察知して衝突を回避するケースはときおり見受けられる。

 だが川田からは、前にワンアンドオンリーがいたため死角になっていた。ワンアンドオンリーがスッと外に進路を変えた次の瞬間、急ブレーキをかけたトレーディングが目の前にいた。これでは避けようがない。

4コーナーでも、活力を失っていなかったエピファネイア。

 4コーナーに差しかかっても、エピファネイアは凄まじい勢いで前に行こうとする活力を失っていなかった。

 「格が高いレースだと、どこかでひと息つかなければ最後までもたないのに、4コーナーまでマイラーのような勢いで走っていた。直線に入るとき、少し抑えて息を入れようと思ったのだが、ここがスタートというほどの勢いがあった」

 そう話すスミヨンがラスト400m地点でゴーサインを出すと、エピファネイアは溜め込んでいたエネルギーを一気に爆発させた。

 見る見る後続を引き離し、2着のジャスタウェイに4馬身もの差をつけフィニッシュ。菊花賞以来ほぼ1年ぶりの勝利を挙げた。

スミヨン「今まで乗った日本馬で一番強い」

 勝ちタイムは2分23秒1。1000m通過59秒6という、良発表とはいえ水を含んでいた馬場ではハイペースと言える流れのなか、ずっと掛かりっぱなしで走り、最後にさらに突き放した強さは驚異的だ。

 「フィニッシュするまでぐんぐん伸びてくれた。今まで乗った日本馬で一番強い」

 そうエピファを讃えたスミヨンは、ブエナビスタに騎乗した4年前のジャパンカップで1位入線しながらも斜行のため降着になった苦い思い出がある。

 「申し訳ないと思っています。それだけに、また乗るチャンスをくれたノーザンファーム代表の吉田勝己さんに感謝しています」

 それにしても「今まで乗った日本馬で一番強い」ということは、オルフェーヴル以上の手応えを名手に感じさせた、ということか。

 管理する角居調教師でさえ、「びっくりしました」と笑い、冗談めかしてこう言った。

 「ちゃんと調教ができていなかったんですけど、スミヨンさまさまですね。あんなに上手くいくことが何回もないのが、この馬の難しいところなんです」

ジャスタウェイはなぜ伸びなかったのか。

 ジャスタウェイは凱旋門賞同様、「脚があれば勝てる競馬」に持ち込んだが、爆発的な伸びは見られなかった。福永は、「ラスト100mぐらいで脚が鈍ってしまった。差を詰められなかったのは、距離が理由なのかどうかはわからないです」と語った。

 ジャスタから半馬身遅れた3着にはスピルバーグが追い込んできた。

 「スタートは出たけど、外枠だったこともあってあのポジション(後方3、4番手)になった。追走に苦労したが、内からよく伸びてくれました」と騎乗した北村宏司。

 ジェンティルドンナは4着。ムーアは「きょうは切れ味勝負ではなく、スタミナ勝負になってしまった」と敗因を語った。

 勝負どころで大きな不利を食らったハープスターは、最後まで勝負を捨てず、ラスト3ハロン2位タイの35秒0の末脚で大外から追い上げたが、5着に終わった。

 ラスト3ハロン最速のスピルバーグでも34秒8だったのだから、瞬発力勝負に持ち込みたかった馬にとっては厳しい流れになってしまった。ムーアがコメントしたように、切れ味が武器の牝馬には不向きなスタミナ勝負、耐久力勝負のレースになったことが、道中掛かり気味で走ったほうが弾けるパワー型のエピファネイアの勝因となった。

 それにしても、これだけのメンバーが揃ったレースで4馬身差をつけたエピファネイアは並の馬ではない。2着はレーティング世界一のジャスタウェイなのだから、このジャパンカップに関しては、文句なしに「世界最強」だった。おそらく来年になるであろうが、同期のダービー馬、キズナとの再戦がますます楽しみになった。

(「沸騰! 日本サラブ列島」島田明宏 = 文)