【愛するご主人様】

「愛するご主人様」
ある一日の終わり・・・係員の女性がわたしを迎えに来る足音が聞こえてきます。

わたしは彼女に連れられて、離れた部屋へと廊下を歩いていきました。
和やかなくらい静まりかえった部屋でした。...
係員の彼女はわたしを台の上に乗せ、耳を撫でて、怖がらなくてもいいといってくれました。
これから起こることにわたしの胸は激しく鼓動を打っていたというの、わたしはなぜかホッとしていました。
溢れる愛情の虜になった私に、もう残された時間はありませんでした。

持って生まれた性質というのでしょうか、わたしは自分のことよりその
係員の彼女のことが心配でした。
これからやらなければならない事にどれだけ苦しんでいることか・・・
わたしには彼女の気持ちがわかるのです――あなたの気持ちの総てを察していたのと同じように。
彼女は涙を流しながらわたしの前足にそっとゴム帯を縛り、わたしはずっと昔あなたを慰めたときと同じようにその手を舐めてあげました。
彼女は手馴れた様子でわたしの血管に針をさしました。
わたしはチクリとする痛みと冷たい液体が身体の中を流れるのを感じながら、ウトウトと横たわり彼女のやさしい目を見て「どうして?」と呟きました。
わたしの犬語が通じでもしたのでしょうか、「ほんとに・・・ごめんね」と彼女がいいました。
彼女はわたしを抱きしめ、あなたは今よりもずっと良い所へ行ける、
誰からも無視されたり虐待されたり置いてきぼりにされたりしない、
自力で生きていかなければならなかったりしなくていい場所、
今いるこんな世の中とは全然違う愛情と光に溢れた場所へ行くのだと。
そしてそこへ旅立つわたしを見守るのが彼女の仕事なのだと口早に告げました。

わたしは最後の力を振り絞り、自分の尻尾を一振りすることで、さっきの「どうして?」は、
決して彼女に対して向けたわけではないことを伝えようとしました。
愛するご主人様、わたしが思っていたのはあなただったのです。 
わたしはこれからもあなたを思い続け、ずっと待ち続けます。
どうかあなたが、わたしのような愛情を持った人達で囲まれて人生を送れますように。

今この瞬間も殺処分されているペットが多数います。何とかしなけば・・・・・

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コメント: 1
  • #1

    今はまだ名も無き者 (水曜日, 10 9月 2014 17:12)

    俺がビッグになって、全世界を幸せにしてやるぜ。
    それしか、ないっしょ。ですよね。