シンデレラ城に映像が照射される「ワンスアポンナタイム」を見るために、毎週末通うカップル。「エレクトリカルパレード」を見るために3時間前からシートを敷いて、場所取りをする父親。ミッキーやミニーを見つけて大はしゃぎする子供たち――。日本最高峰のエンターテインメントテーマパークであるディズニーリゾートには、夢の世界を楽しもうと全国から人が集まる。

 経営母体のオリエンタルランド社は、顧客を楽しませることに余念がない。2015年から10年の間に約5000億円を投入して、ディズニーランド、シー、リゾートのリニューアルをすると発表した。

「ランドのエリアは拡張され、新しいアトラクション施設が作られます。2015年の4月からスタートする『リトル・マーメイド』の新ミュージカルには40億をかけるなど、力を入れています」(オリエンタルランド関係者)

 入園料が徐々に値上げされ、9年前は大人1人5500円だったのが現在は6400円にまで上昇。2014年の3月期決算では入場者数3000万人を突破し、経営利益は過去最高の約1126億円に上った。
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「シフトが定まらないまま働かされる」

 それにも関わらず、

「労働条件が酷過ぎる」

 と異議を唱えたのは、ランドやシーで7年以上働くキャストたち10名。「オリエンタルランドユニオン」という労働組合を結成し、労使交渉に乗り出したのだ。

 彼らが直面する労働環境はかなりシビアなようだ。人気のショーの1つである「マーメイドラグーンシアター」に出演するキャストは、待機時間もメイクは落とせない。そのため自由に動き回ることはできず、1日の拘束時間は約7時間。しかし、支払われる給与はショー中と前後15分の実質5時間半程度なので、月給が数万円という人もいるのだという。

「生活が成り立たないため、他のアルバイトと掛け持ちするのが当然のことになっています」(あるキャスト)

 そして、不安定だった雇用が破綻したのは、2014年の4月。ショーのリニューアルに合わせて、多くのキャストが首切りにあってしまったのだ。

 そのうちの1人で、ショーのパフォーマーとして9年働いてきたオリエンタルランドユニオン書記長の浜元盛博さんは言う。

「一番の問題は、多くのキャストは契約更新時に労働条件が明示されない事です。週に何日、何時から何時まで働くのかということが分からないまま働いています。『明日は6時間』と言われていざ出勤してみたら、『今日はお客さんも少ないからやっぱり2時間で』と、会社側が勝手に決められる。シフトも分からないまま働いているということが、何よりの不安要素なんです」

 また、他のキャストはこう語った。

「ショー中でも震度3は安全圏内とされていますが、宙づりでは本当に怖い。もう少しキャストのことも考えて欲しい……」

 来場者に夢を与えてくれる、あの明るい笑顔のキャストたちがまさかそんな状態で働いていたとは。どうか、働く側にも夢を与える“ディズニー”であって欲しい。

(取材・文/松村優子)